球界随一の理論派がなぜ一生の伴侶に沙知代夫人を選んだか
「あなた、息子に何言ったの?」
克則氏は、私に苦言を呈されたと受け止めたらしい。監督は「あの子は優しい子やから」と言ったが、母親は動物的な感覚で息子に愛情を抱いている、と思った。
ヤクルトの監督を辞めた後、監督に電話した。お手伝いさんが伝言して、自宅へ電話が来たのは午前3時すぎだった。
「野村ですけど、林さん何のご用? ちょっと出かけてたのよ」
沙知代さんだった。用件は監督への本紙評論家要請で、後日、正式に書面を送る、と決めたのも沙知代さんだった。
■自分にない強さ
沙知代さんはすべてを仕切った。オーナーなんだから私の好きなようにやる、母親だから息子をかばう。亭主を動かすのは私の役目。女王のように振る舞って、監督とは対極にいる人だった。テレビに出るようになって言動は過激さを増し、経歴詐称、脱税という勇み足まで踏む始末だった。
しかし監督は、それを「自分にはない強さ」と見ていたように思う。