球界随一の理論派がなぜ一生の伴侶に沙知代夫人を選んだか
野村監督はコンプレックスの強い人だった。自分にはないというコンプレックスが、強ければ強いほど成功へ近づくことを知っていた。
野球で成功するのに必要だったコンプレックスを野村監督、人生の伴侶にも求めたのではなかったか、と思う。
「野球はアタマでやる」という理論派の人が、その昔「女のために野球を捨てる」と覚悟したほど、沙知代さんは、野村克也にとって唯一無二の存在だったのだ。
「対照的でしたけど、いいコンビだったと思います」と克則氏も言った。
時計の振り子が等間隔で振れるように、ふたりは人生の時を刻んだ。
「死ぬのも悪くないよ。サッチーさんに会えるんだから」と、監督の言葉が聞こえるようだ。 =おわり
(林壮行/元 日刊ゲンダイ運動部長)