新谷仁美直撃<1>「国民が反対なら五輪は不要」発言の真意
新谷仁美(東京五輪 女子長距離代表候補、32歳)
新型コロナウイルス禍により東京五輪は1年延期になった。アスリートたちはそれぞれの思いを胸に来夏に向けてすでに動きだしている。そんな中、女子陸上5000メートルと1万メートルで五輪参加標準記録を突破している新谷仁美(32)の「国民が反対するなら五輪は開催する必要はない」という発言が注目を集めた。その真意や陸上に懸ける思いなどを聞いた。
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――五輪が延期になった影響について教えて下さい。
「私、緊張しやすいタイプなんです。あまり試合は好きではありません。五輪の延期に関しては、私個人の問題ではなく、国や大会側(IOC)が決めたことなので気持ち的には楽です。私たちプロは試合で結果を出さなければ成立しない仕事ですが、私としては1年延期になって少しラッキーと思います。一方で、これは常々言っていることですが、プロの仕事は五輪がすべてではありません。五輪や世界陸上だろうが、国内大会や記録会であってもすべての大会において結果を出すことが私たちの仕事です。そこは選手側が勘違いしてはいけないことだと思います」
■1円でも報酬を貰えばプロ
――実業団選手もプロですか。
「企業やスポンサーから1円でも報酬を貰っていればプロだと思います」
――新谷さんは先月、東京五輪の開催に懐疑的な発言をしました。
「(五輪は)私たち選手だけでやる大会ではありません。私たちがやりたいという気持ちより、国民の皆さんがやりたい、応援したいという思いでなければ成り立たない。国民の皆さんが反対するのであれば、私は五輪は開催する必要はない。そう言いました。やっぱり東京で行われる五輪ですから、新型コロナウイルスがくるまでは他の国で開催されるより特別なものなのかなと思っていました。私自身もやりたいという気持ちはもちろんありました。でも、コロナがきて、7月の東京選手権やホクレンの大会(※)で、初めて無観客試合を経験しました。無観客って、選手や応援する側にもマイナスでしかないのかなと、すごく感じたのです。意見は多々あるでしょうが、応援なしの五輪は考えられない。選手が主役ではありますが、私たち選手を見たい、私たち選手に夢を持っているっていう人たちがいる中でやるからこそ、私たちは生かされる。開催に反対されたり、応援がない中での試合は、選手にとっては(メンタルの)ダメージもあります」