進路に悩む高3の菅野に中日打線を抑えられるか想像させた
大学進学かプロ入りか――。巨人に入りたい東海大相模3年の菅野智之(現巨人)は進路で悩んでいた。菅野が東京ドームのバックネット裏最前列で巨人―中日戦を観戦するという。前年2006年まで2年間、中日の捕手コーチを務めた私は菅野の父・隆志氏にこう伝えた。
「自分がマウンドに立って中日打線を抑えられるイメージができると言って帰ってきたら、プロ入りしてもいい。智之は自分の能力を客観的に判断できるから、その決断が一番いい選択。きっと大学を選ぶと思うよ」
伯父でもある原辰徳監督率いる巨人のユニホームを着てマウンドに立ち、中日の井端弘和、荒木雅博、福留孝介、タイロン・ウッズらの「強竜打線」と頭の中で対戦することを勧めた。すると翌日、隆志氏から返事があった。
「大学へ行くことに決めたよ」
菅野は賢い男だ。今の実力では中日打線を「抑えられない」と判断したようだ。
東海大に進学すると、縦の変化球を習得し、めきめき成長した。最も良くなったのはカーブだ。1年の浪人生活を経て、あの日、私がアドバイスした通り、「即戦力」として、12年のドラフト1位で念願の巨人に入団。バッテリーコーチだった私と再会を果たすことになる。