代表ウィークの特例措置が東京オリ・パラを開催するための試金石
サッカー日本代表ウィークが3月22日から始まった。
日本代表は25日に親善試合の韓国戦(横浜・日産スタジアム)が、30日には2022年カタールW杯アジア2次予選のモンゴル戦(千葉・フクダ電子アリーナ)がある。
そして東京五輪に臨むU-24(24歳以下)日本代表は、26日(東京・味の素スタジアム)と29日(福岡・北九州スタジアム)に五輪南米予選を1位で突破した優勝候補のU-24アルゼンチン代表を迎え撃つ。
今回の4試合に関しては対戦相手の韓国、モンゴル、アルゼンチンの選手・スタッフはもちろんのこと、海外でプレーする日本人選手や第三国のレフェリーたちの入国は、政府から特例として認められたことでマッチメイクが実現した。
日本サッカー協会(JFA)が講じた防疫措置は、次のようなものだ。
【海外から来る選手・スタッフ・レフェリーは出国前72時間以内の検査で陰性が証明されてから移動し、日本に入国時も空港で検査を受ける】
【入国翌日から3日間の検査で陰性にならなければ試合に出場できない】
最も早い25日の日韓戦を例に取ると、韓国代表と日本の海外組の選手は22日に入国し、当日を含めて3日間の検査で陰性にならないと試合には出場できない。もちろん日本代表の国内組も毎日検査を受けなければならないし、大会後にチームへ戻った後、3日間は試合に出られない。
さらに日本に滞在中は「バブル方式」が採用されている。
これは<大きな泡で開催場所や宿泊先を包むようにして運営。選手や外部との接触を遮断する>もの。21年夏のテニスの全米オープン、1月のハンドボール男子世界選手権(エジプト)などで実績を挙げている。
日本代表は、練習と試合以外の外出を一切禁止され、ホテルでは個室が用意され、宿泊フロアや食事会場やマッサージルームなど国内組と海外組で完全に分ける。
チーム全員が集まるのは練習、ミーティング、試合だけ。もちろんソーシャルディスタンスを確保した上である。
ちなみにU-24日本代表のDF渡辺剛(FC東京)などは、20年末にカタールで集中開催されたACL(アジア・チャンピオンズリーグ)の決勝ラウンドで「バブル方式」を経験済み。「ホテルから外出できないのには慣れました」と話していた。
こうした特例措置が新型コロナ禍で大掛かりに採られるのは、団体競技ではサッカーの日本代表が初めてである。
■「国際試合が上手くいかないとオリ・パラはできない」
それもこれも、すべては東京五輪・パラリンピックを安心かつ安全に開催するための試金石だからだ。
実際、22日に開催されたJリーグ、NPB、専門家チームによる第28回目の対策連絡会議で座長の賀来満夫(東北医科薬科大)ドクターは「試合は五輪を見据えた水際対策。(選手らの)出国・入国で検査をして、どのように対策したら安全に開催できるか、見通しが立つし、課題も見えてくるかもしれません。団体競技のオペレーション、シミュレーションをしっかりみたい」と期待を込めていた。
東邦大学の舘田一博ドクターも「国際試合は非常に大事なオペレーションの確認です。これが上手くいかないと(東京)オリ・パラはできない。試して実証するチャンスなので十分に注意しつつ、緩めていいところを探すチャンスです」と4試合の重要性を強調した。
こうしてさまざまな期待(と思惑)が入り混じった各日本代表のトレーニングが開始された。まずはーー。
23日の午前中に試合を控えた日本代表とU-24日本代表ではなく、U-20(20歳以下)日本代表の練習(千葉・稲毛海浜公園スポーツ施設)を取材した。
本来なら20年10月にU-19(19歳以下)アジア選手権を戦う予定だったが、同大会は21年3月に開催延期された上に中止になった。さらに22年5月にインドネシアで開催される予定だったU-20W杯も中止が決定したため、目標は「2024年パリ五輪に切り替わりました」と山本昌邦JFA副技術委員長が言うように3年後の五輪となった。
U-20には今シーズン、J1で4ゴールをマークしている荒木遼太郎(鹿島FW)や東京Vから徳島へ移籍したMF藤田譲瑠チマ、西川潤(C大阪MF)といったJ1の舞台を経験している選手も選出されている。
キャンプは24日までの3日間と短いが、今回は「実施できたことに意義がある」と言っていい。
パリ五輪までの道のりは長く、具体的な目標は23年9月(10日~25日)に中国・杭州で開催される第19回アジア大会で優勝することになる。
東京五輪が終わった後は、今回<ひとつ上のカテゴリー>となるU-24日本代表に招集されたヘタフェの久保建英(19)、鳥栖Uー18(18歳以下)所属の中野伸哉(17)らも加わってくるだろう。
その後、どんなチームに仕上がっていくのか、非常に楽しみである。
■齋藤コーチがコロナ陽性に
同日午後4時からは千葉・美浜にあるJFA夢フィールドで行われたU-24日本代表の練習を取材したが、ここでちょっとしたトラブルがあった。
同時刻に反町康治JFA技術委員長がブリーフィングを実施するというアナウンスが流れたものの、なかなか始まらない。
そのトラブルというのが、実は日本代表の齋藤俊秀コーチが、チームに合流する前のスマートアンプとPCR検査の結果、陽性と診断されたので隔離措置がとられたということだった。
齋藤コーチは無症状で発熱もないという。保健所の判断で濃厚接触者はいないということでキャンプは、そのまま行われることになった。
さらに帰国便のディレイによって吉田麻也(サンプドリアDF)と守田英正(サンタ・クララMF)が成田空港に着いた時、すでに通常業務が終わってしまっていた。
取り決めでは、入国時の空港での検査で陰性が証明され、さらに翌日と翌々日の計3日間、陰性でなければ25日の韓国戦には出場できない。
吉田と守田は、必ず22日中に陰性を証明しなければならなかった。
ここで多くの関係者の尽力によって検査が行われ、陰性が証明されたという。吉田は24日のズーム会見で「(空港で)こんだけしてもらって(韓国戦で)結果を出せなければ男じゃないな」と深い謝意を表し、「この話は試合が終わった後に話させてください」と締め括った。
■三笘は絶好調、久保は…
さてU-24日本代表である。主軸MFの三笘薫(川崎F)は、全体練習後の1対1の局面でもキレキレのドリブルを見せ、練習相手に尻もちをつかせるなど好調を維持しているようだ。
気になるのは、練習を途中で切り上げ、足の付け根辺りをさすっていた久保である。
海外組は、パス回しをやった後はランニングと軽めの練習だったが、もしかしたら久保は、26日の試合を回避するかもしれない。
久保は24日実施のズーム会見で「三笘選手は個人的に交流があって初対面ではないので」と明かし、さらに「Jリーグを見ていても抜けていると言うか、僕が言うことではないですが、見ていて凄く楽しい選手という印象がある。早く一緒にプレーしたいです」と話していた。
筆者も同感である。2人の共演は是が非でも実現してもらいたものだ。