大谷襲う“合理的な二刀流消滅”危機 ポストシーズン狙いで
今季2度目のマウンドは不満の残る内容だった。
エンゼルス・大谷翔平(26)が日本時間21日のレンジャーズ戦に先発。4回を1安打無失点、7三振も、7四死球。予定されていた75球を超えたため(80球)降板した。
制球が定まらずに首をひねるシーンが多く、「自分でピンチを招いて、自分で抑えてという感じだった」とは試合後の本人。この試合を中継した地元放送局「KCOP」によれば4回以下で、7奪三振、6四球以上を記録しながら、無失点に抑えたのは史上初とか。つまり結果オーライの独り相撲だったのだ。
■マドン監督の真意
初登板だった5日のホワイトソックス戦はDHを解除して「2番・投手」で出場、本塁打も放ったが、今回は打席に立たなかった。その理由についてマドン監督は「何かあれば早めに交代せざるを得なくなる」と説明した。
スタメンでDHを解除すると、その試合は指名打者を使えない。大谷が長いイニングを投げればともかく、序盤に降板するようだと後のやりくりが困難になる。2番手以降の投手も打席に立つことになるし、代打を送れば野手の無駄遣いになる。大谷は前回登板でマメができた上に、四回以降はスタミナ不足から球威が落ちたように、体力面も不安を抱えている。指揮官は、現状の大谷には先発として最低限の役割を果たす保証がないと判断したからこそ、降板後のことも考慮してDHを潰さなかったのだ。
投手の調整不足
「22日の投球を見る限り、明らかに投手としての調整が不足していると言わざるを得ません」と、JスポーツMLB中継で解説を務める評論家の三井浩二氏がこう続ける。
「直球、変化球とも、リリースポイントがバラバラで制球が安定しませんでした。そのうえ直球の最速は約157キロと大谷にしては物足りなかった。前回登板からブルペンに入ったのは2~3回で、試合で投げるスタミナや肩肘の周辺の筋力が落ちて、満足いくパフォーマンスを発揮できていないようにみえました。二刀流を継続するのであれば、渡米1年目のように登板日前後は休ませて、3日前から登板に備えて調整するサイクルが必要ではないでしょうか」
投手とは対照的に今季の大谷は打者として好調だ。ここまで主に「2番・DH」で14試合に出場し、55打数17安打の打率.309、4本塁打、12打点。開幕ダッシュに成功したチームの打線を牽引しており、3番トラウト、4番レンドンの強打者2人へのつなぎ役としても欠かせない存在になっている。
「マドン監督としても好調が続く大谷を打線から外すわけにはいかず、今後も打者優先での起用になるでしょう。登板日前後もDHでのフル出場が続けば、投手としての調整はいよいよおろそかになりかねません。練習不足のまま実戦マウンドに上がっても、指先の皮膚は厚くならないし、マメができやすい体質も改善されない。スタミナ不足も解消できません。故障リスクも高くなるため、大谷を投打でフル活用するのは決して得策ではないように思う」(三井氏)
■エース級の補強
大谷を投手で起用することで、他の先発へのしわ寄せも生じている。先発6人制を敷くにもかかわらず、投手によっては中4日でのマウンドを強いられるなどローテが変則になっているのだ。
エ軍はア・リーグ西地区でアスレチックス、マリナーズから0.5ゲーム差の3位。十分、プレーオフを狙える位置につけている。
リリーフ陣の防御率3.55はア・リーグ6位と安定しているのに対し、先発陣の同5.53はリーグワースト(数字はいずれも日本時間21日現在)。
2014年以来7年ぶりのポストシーズン進出を目指すエンゼルスにとって、先発陣の立て直しは最重要課題だけに、不確定要素の多い大谷の投手としての復調をいつまでも待っているわけにいかない。
「マドン監督は今季が3年契約の2年目。優勝請負人として招かれた以上、結果を求められる立場です。大谷を投打でフル回転させたいというのが本音でしょうが、二刀流の完全復活を待つ余裕はない。エンゼルスのように資金力のある球団は、7月末のトレード期限までにエース級の補強に動くはずです。先発陣が整えば、野手としてフル出場を続ける大谷の負担を減らすためにも、ローテから外す可能性もあります」(スポーツライター・友成那智氏)
チームの好調が続けば続くほど、大谷はマウンドから遠ざかることになりそうだ。