阪神・矢野監督の号泣インタビューが波紋 シーズン中の「指揮官の涙」を評論家2人が斬る
阪神・矢野燿大監督(52)の涙が波紋を広げている。阪神は12日のDeNA戦で九回裏に3点差をはね返す逆転サヨナラ勝ち。2死から5連打の驚異的な粘りに感動した矢野監督はインタビュー中に「いや、えー、感動しています。苦しかったですけど、本当に一人一人が……」と感極まって言葉を詰まらせると、さらに「ちょっと待ってください……」と言って5、6秒ほど沈黙。「全員の気持ちだと思います」と涙をこぼしながら言葉をつないだ。
中日の一軍捕手コーチとして落合監督を支えた経験がある解説者の秦真司氏がこう指摘する。
「どんな時も表情を変えなかった落合監督は、相手からすれば、やはり不気味。努めて喜怒哀楽を見せない監督は多いですよね。あの涙で矢野監督の苦悩が垣間見えたし、最大8ゲーム差から追い上げている巨人からは『泣くほど苦しいのか』と見えたでしょう」
巨人OBで評論家の高橋善正氏は「シーズン中に監督が涙を流すなんて見たことがありません」とこう続ける。
「矢野監督はきっと人がいいのだとは思う。安打を放った選手に塁上でガッツポーズをさせたり、チームの雰囲気を大事にして喜怒哀楽を前面に出す。今どきの選手気質に合わせるのはいい。しかし、試合の結果で涙を流すのは感心しない。プロである阪神ナインが『よし、泣いてくれた監督のために頑張ろう』となるでしょうか。大部分は『おいおい、まだ終わってないのに、監督は大丈夫か?』と不安に感じたのではないか。勝負師としては頼りないし、重要な局面で非情になれず、情に流される監督に映ってしまう。相手にスキを見せることになりますから」
巨人・原監督なら?
2012年から計7年間、巨人でバッテリーコーチなどを務めた前出の秦氏が言う。
「優勝インタビューは別として、巨人の原監督なら絶対にないでしょう。常に『目標(日本一)はまだ先』というのがあって、よかった、よかったでは終わらない。劇的な試合の後でもコーチ陣に『喜び過ぎだ』とか『浮かれるな』とクギを刺すし、ミスをした選手が殊勲打を放った場合でも『自分で蒔いた種を、自分で刈ったな』とチクリとやって戒めます。熱い一面はありますが、基本的には冷静に周囲を見渡しているのです」
指揮官の涙のせいかどうか、阪神は昨13日、DeNAに2-8と大敗。巨人も敗れたため前半戦の首位ターンは決まったが、原監督は逆転優勝のためには「3ゲーム差以内が目安」としているだけに、2ゲーム差は射程圏内だ。
後半戦で巨人に抜かれ、矢野監督が逆転V逸の涙を流すことにならなければいいが……。