夏の甲子園V本命は智弁和歌山、愛工大名電、東海大菅生…対抗の2校と意外なダークホース
9日に開幕する全国高校野球選手権大会。絶対的な本命はない。今春センバツで8強入りした中から出場を決めたのは、準優勝の明豊、8強の智弁学園、東海大菅生の3校。その東海大菅生の初戦の相手は、49校中最多の5度の優勝を誇るV候補の大阪桐蔭で、1回戦屈指の好カードとなった。大混戦の第103回大会の優勝の行方を占った。
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「私が本命に推すのは智弁和歌山です」とスポーツライターの美山和也氏がこう言う。
「和歌山大会決勝で市和歌山のドラフト1位候補、152キロ右腕の小園を攻略し、勢いに乗っています。高嶋前監督の時代は150キロの高速マシンをガンガン打ちまくる練習が有名でしたが、中谷監督に代わり、打撃ケージではスライダー、150キロ、通常スピードの直球のマシンを3台並べてバランス良く打つ練習をやっている。宮坂、徳丸ら今年も打線は強力ですが、捕手出身の監督らしく、バッテリーを重視していて、エース中西、市和歌山との決勝の先発を任された伊藤はいずれも147キロを投げる好投手です。中谷監督がつくるチームは、投手陣がしっかりしているという特徴がある。高嶋前監督の伝統を引き継ぐものと中谷監督がこだわる野球が融合し始めた。今夏それが結実する予感がします」
愛工大名電も虎視眈々と頂点を狙う。愛知県「私学4強」の一角で、寺嶋、田村、野崎の3投手を中心に、東邦、センバツ4強の中京大中京、享栄の3強全てに勝利。打線は勝負どころでの集中打が武器。総合力は高い。
「補欠のミカタ レギュラーになれなかった甲子園監督の言葉」(徳間書店)など高校野球関連の著書が多数あるスポーツライターの元永知宏氏は「大阪桐蔭との対戦が決まった東海大菅生を本命に挙げます」とこう続ける。
「2年ぶりの夏の選手権。コロナ禍で各校が実戦不足にあえぐ中、春の甲子園で準々決勝まで進んだメリットは大きい。大阪桐蔭もセンバツに出場しましたが、初戦敗退だったため、甲子園の経験値は少ない。東海大菅生の捕手・福原や4番・小池ら4人がスタメンに入る2年生のイキがいい。投手陣の層も厚く、肩を痛めてセンバツは不本意な投球に終わったエース左腕・本田が復調したのも大きい。100回大会で済美の中矢監督を取材した際、『大阪桐蔭と戦うなら初戦がいい』と話していました。根尾(中日)や藤原(ロッテ)を擁し、センバツを制した大阪桐蔭でさえ、甲子園の初戦はフワフワした感覚というか、地に足が着かないところがある。勝ち上がってきた大阪桐蔭ならとても手に負えないということなんです。今回も『横綱』といわれますが、必ず初戦はスキが生まれます。センバツも先日の大阪大会も苦しんでいて、今年のチームは絶対的ではありません。大阪桐蔭同様、東海大菅生も全国から好素材が集まっています。センバツ初戦も聖カタリナ学園との接戦を制して8強入りした。大阪桐蔭にも互角以上の戦いができるとみています」
二松学舎大付の市原監督は「優勝狙う」と宣言
対抗は二松学舎大付だ。元永氏が続ける。
「エース左腕・秋山は力が抜けていい球がいくようになり、昨秋より成長しました。市原監督も『ボールは大江(現巨人)の高校時代よりいい』と太鼓判を押しています。2番手左腕の布施も好投手。東東京大会決勝で関東第一の152キロ右腕・市川を攻略した打線も、勝負強い中軸、小技の利く1、2番と下位打線は役割がしっかりしていてつながりがいい。市原監督は『全国優勝を狙う』とはっきり宣言しています」
県岐阜商も地力がある。
「鍛治舎監督は秀岳館を率いていた頃から投手を何人か用意して『継投』で戦っていました。今チームも左の野崎、右の小西ら複数の好投手がいる。高木を中心とした打線も強力。今春のセンバツ、昨夏の交流試合を経験したものの、不完全燃焼な負け方に終わった。初戦の相手は明徳義塾の名将・馬淵監督だけに、燃えるものがあると思います。鍛治舎監督の『継投力』に注目です」(元永氏)
美山氏はダークホースに静岡を挙げる。
「池田監督は今年4月に就任し、打つだけでなく、機動力を使うようになり、飛躍的に得点力がアップしました。静岡大会6試合で1失点の堅守。軸になるのは、身長192センチの長身右腕・高須。最速は144キロで大崩れしない。制球のいい藤浪(阪神)といったところでしょうか。県内では『最強』といわれていたチーム。台風の目になり得ます」