爆撃機ミュラーが見たくて真冬の国立競技場で寝袋にくるまった高2の冬
キッカーはヨハン・ニースケンス。彼はGKゼップ・マイヤーの守るゴールに向かい、右足インステップの強シュートをど真ん中に決めた。
それまでPKは、左右上下の隅をインサイドキックで正確に狙うというのがセオリーだった。
例外は1976年のユーロ(欧州選手権)決勝でチェコスロバキア(当時)のアントニーン・パネンカが決めたチップキックくらいだろう。
GKがシュートコースを読んで左右に動くことを見越しての強シュートだったが、このニースケンスのPK以降は「ど真ん中のシュートもあり」となり、キッカーの選択肢が増えたという意味に置いては、画期的なシュートといっていい。
試合は前半25分、ドリブラーのベルント・ヘルツェンバインの突破をビム・ヤンセンが倒して西ドイツがPKを獲得。これをパウル・ブライトナーがセオリー通りに左下隅にきっちり決め、同点に追い付いた。
43分である。右サイドを突破したライナー・ボンホフのマイナスの折り返しをゴールのニアサイドに詰めていたミュラーは、トラップしたボールを自身の後方に置き、すかさず戻りながら反転して右足シュート。