爆撃機ミュラーが見たくて真冬の国立競技場で寝袋にくるまった高2の冬
決して強いシュートではなかった。ブロックに入ったルート・クロルの股間を抜けたことも影響したかも知れないが、素早い動きからのシュートにGKヤン・ヨングブルートは反応することができなかった。
一般的には、右サイドからの折り返しをニアサイドで待った場合、右足でコースを変えるシュートを放つか、ニア上に強シュートを突き刺すのがセオリーである。
ところが、ミュラーは後方にトラップしてからシュートを打った。前代未聞といっていい。
サッカー部の仲間たちと「もしかしたらトラップミスではないか?」と話し合ったものだが、瞬時の判断に応じた本能に赴くままのシュートは、やはりミュラーしかできない〈マジック〉だった。
■ブンデスリーガでは約2年に一回のペースで得点王に
何故これほどまでに1974年西ドイツW杯決勝のシーンを克明に覚えているかーー。この大会の決勝だけは、東京12チャンネルが初めて衛星放送で完全生中継したからだ。
放送は、日本時間の7月7日午後11時50分から始まった。