野球「金」甲斐拓也<2>キャッチャー冥利に尽きた日ハム・伊藤大海の度胸
「そうですね。まず、代表メンバーが事前合宿に全員合流して、練習や練習試合の中で投手陣のボールを受けてから話をした。その投手の自信のあるボール、どう試合を組み立てたいかを聞いた上で、その強みをいかにして生かせられるか、と。先発なら試合前に話せるけど、中継ぎはどんな場面で登板するかわからない。だからマウンドに行って短く話すこともあったし、試合中のブルペンへの電話も主に僕の意図を伝えていました」
そんな甲斐が「こいつは本当に凄い」と舌を巻いたのが、日本ハムのルーキー、伊藤大海(23)だ。
伊藤といえば、準決勝の韓国戦で頻繁にロジンバッグを使い、韓国側から「白く煙ってボールが見えなくなる」とクレームをつけられながら、それでも構わず使い続けた。
「まあ、あれは伊藤が汗っかきだからじゃないですか。それよりも僕が驚いたのが、伊藤は僕の出したサインに一度も首を振ってないんですよ。中でも予選リーグ2戦目のメキシコ戦、3番打者のメネセスへの配球です。伊藤が登板する前、先発の森下(広島)が彼に2安打された。打たれたのは2球とも外寄りのボール。では3打席目はどうするか。4打席目のことも考えると、何かひとつ、こっちが攻めなきゃいけない場面でした」