柔道男子100キロ級「金」団体混合「銀」ウルフアロン<4>メディアに引っ張りダコの今こそ柔道の普及を
ウルフアロン(25歳、柔道男子100キロ級・金メダル、団体混合・銀メダル/了徳寺大職)
東京五輪を制し、史上8人目の3冠(全日本選手権、世界選手権、五輪)を達成した。大会直後のメダリスト会見で100キロ超級への転向を示唆したが、2024年パリ五輪は現階級で挑むつもりだという。
「もし100キロ超級に転向するなら、筋肉量を増やして体を大きくしながら、体を支える力をつけていくと思います。体重は115~116キロぐらいがいいのかなと。ただ、次の五輪は3年後です。4年あったら少しは休むこともできるし、ある程度トップでやれると思いますが、階級を上げると相手の技の威力が強くなることに加え、自分自身の膝の問題もある。それに、100キロ超級でパリ五輪に出るにはまず日本一になって世界選手権を戦って、となる。今の自分が仮に100キロ超級に転向したとしても、ランキングは10番に入るかどうかと思う。だから時間的にも難しいのかなと」
今年12月に行われる全日本選手権は欠場する可能性もある。メディアに引っ張りダコの、今しかできないことがあると考えているからだ。
「テレビなどを通して、柔道選手のイメージをもう少し変えていきたいんです。柔道を始めたいなとか、子供にやらせたいという人を増やすことができたらなと」
柔道普及への思いは強い。たとえば、バスケ、フェンシングなどの各競技連盟はメダリストに対し、メダルの色ごとに規定されているJOCからの報奨金とは別に、独自の報奨金を支給するケースもある。個人で金、団体で銀を獲得したウルフはJOCからの700万円に加え、所属先の了徳寺大から「結構な額」の報奨金を得たが、全日本柔道連盟からのそれはない。それでも、「不満なんてまったくありません」と言い切った。
柔道普及に対する思い
「全柔連は僕がジュニアの頃から海外遠征などの費用を全部出してくれています。育成の段階で全てを頂いているんですよ。もし勝った選手だけがお金を得られるシステムなら、お金のない選手は海外の大会すら行けません。それだと後進は育たない。だから、(もし全柔連から報奨金が出たとしても)メダルの報奨金を柔道発展のために使うか、それとも自分がもらうか、どちらかを選べるのなら僕は迷わず全柔連へ『育成のために』と差し出しますね」
JOCなどから受け取った報奨金は大半を貯金するという。
「なにか本当にお金を使いたいものができたら、その時にと。貯金したいわけじゃなくて、物欲がないんです。今つけている数珠も自分で作りましたし。たとえば、自宅にあるものでも、壊れていないのに炊飯器を買い替えたいという人もいると思いますけど、使えるならそれを使えばいいというタイプなんです」
将来のビジョンについてはこう続ける。
「引退後も何かしら柔道に関わることをしたいです。柔道界にはお世話になっていますからね。指導者になるのか、テレビなどで柔道を広める役目を担うのか……。どんな形になるかはまだわかりませんが、何かしらの形で恩返しをしたいと考えています」
そして最後は、「……すげえ良いこと言いましたよね、今(笑い)」と、締めくくった。