ワリエワ騒動はこれからが本番…非難殺到“ロシア鉄の女”は粛清対象にならないのか

公開日: 更新日:

「鉄の女」への非難が止まらない。

 ドーピング違反を犯したフィギュアスケート女子のワリエワ(15、ROC=ロシア・オリンピック委員会)は、17日のフリーで精彩を欠き、4位に終わった。キスアンドクライで号泣する15歳の姿に世界中が重い空気に包まれた。

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 問題は競技直後に起きた。「鉄の女」ことエテリ・トゥトベリゼ・コーチが泣きながら肩を落とすワリエワをねぎらうこともなく、「何で戦うのをやめたの? 説明して!」と詰め寄ったのだ。ロシアメディアによると、ワリエワは「これで表彰式は中止にならない」と話したという。

 銀メダルを獲得した同じROCのトルソワも競技後、ハグしようとするトゥトベリゼコーチを身をよじって振り払い、「嫌い! みんな知ってるのよ!」と激高。同コーチのもとを離れることを示唆したそうだ。

 鉄の女によるワリエワへの冷酷すぎる言動に、五輪経験者やメディアは一斉に批判。同コーチはワリエワのドーピング違反が発覚した際もロシア国内から「恥を知れ!」などと非難されていた。

 18日に会見を行ったIOCのバッハ会長も、「こんなにも冷たい態度を取れるのか」と異例の批判を繰り広げ、「ドーピングはほとんどの場合、アントラージュ(周囲)が関わっている。15歳の未成年の体内に禁止薬物を投与した人物が有罪。彼女を守るべきだった人々への調査が始まる。断固とした措置をとる」と言及。選手には不正告発を促した。

「鉄の女=諸悪の根源」という構図ができつつある。同コーチは選手を「原材料」、スケート場を「工場」と表現。2018年平昌金のザギトワら多くのメダリストを輩出した一方、徹底した体重管理などにより、14年ソチ団体金のリプニツカヤ、18年平昌銀のメドベージェワらが摂食障害になったことを明かしている。

「過酷な環境に追い込まれ、多くの教え子がエテリから離れたがっていて、実際に去った選手もいる。しかし、最終的に彼女のもとに復帰しているケースが多い。エテリがロシアの女子フィギュア界を仕切っている以上、選手が歯向かうことは許されない。ワリエワのドーピング違反も過度な勝利至上主義がもたらした負の遺産というしかない」(フィギュア関係者)

元ロシア反ドーピング機関所長が実態を赤裸々に明かす

 ロシアはソチ五輪でデータの改ざんなど組織ぐるみのドーピング違反が発覚した。ロシア反ドーピング機関所長としてこれに関与、その後、ロシア当局による粛清を恐れて米国へ国外逃亡したロドチェンコフ氏は、映画「イカロス」などで、国家主導による尿検体のすり替えの実態などを赤裸々に明かしている。

 独メディアがロシアのドーピング違反を報じたことをきっかけに、ロシアは国際的な非難を浴びた。プーチン大統領は組織的不正を否定。「責任は(違反した)個人が負うべきだ。逃げられはしない」と強調した。その後、2人の研究所員が不審死を遂げた。

 そこでトゥトベリゼコーチだ。ロシアの大衆紙は先日、19年に同コーチが禁止薬物となったメルドニウムに代わる「新たな薬が必要だ」と語っていたと報じた。ドーピング違反に同コーチが関与していた可能性は消えないし、ロシアは今もなお、組織的なドーピングを疑われているのが実情。

 ロシア当局が鉄の女に「個人の責任」を問うても、何ら不思議ではない。

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