鈴木誠也「5年総額100億円」でカブス入り! 数々の証言をもとに徹底解剖する
広島からポスティングシステムでのメジャー移籍を目指していた鈴木誠也外野手(27)の移籍先が、ナ・リーグ中地区のカブスに決まった。日本人野手のメジャー入団時の契約としては史上最高額の5年総額8500万ドル(約100億円)で合意。渦中の男を徹底解剖した。
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■暗闇の特訓
広島OBで投手コーチや編成部長などを歴任した川端順氏がこう言う。
「誠也がドラフト2位で入団した2013年、編成部にいた私は、交代で寮に泊まることがあったのですが、門限の夜10時に見回りに出ると、暗闇の中から音が聞こえるんです。近づいてみると高卒1年目の誠也が一心不乱にバットを振っていた。『1人になってからが勝負』という意識もさることながら、カープは全体練習もきついのに、入ったばかりの高校生に、まだ体力が残っているのかと驚いた。隣接する室内練習場でマシン打撃をやる選手は多いのですが、他の選手がいると、新人は使いにくい。素振りならいつでもできますからね。前田智や丸もそうでしたが、1人に強い選手が成功するんです」
■反骨精神
「途上のチーム」に縁がある。
カブスは昨年、主力を軒並み放出。2016年ワールドシリーズで優勝したチームを完全に解体し、トレードで獲得した若手有望株を育成する方針。再建期へ移行した。優勝を目指す数年後を見据えたチーム強化の最中なのだ。
メジャー挑戦するにあたり、鈴木は「プレーオフに出場できるチーム」を条件の一つに挙げていたといわれたが、これまで「王道」に属したことはない。
高校を選んだ際もそうだった。荒川シニア時代から知られた存在で、甲子園常連校からも誘われたという。
本人は「あの頃はヤンチャだったんで」と謙遜するが、当時の東京はまだ帝京が幅を利かせていた。他にも関東第一や日大三、横浜だって選べたはず。一方で進学を決めた二松学舎大付は長く甲子園から遠ざかっていた。小学生の頃、父・宗人さんと親交のあった二松学舎大付の市原勝人監督に「高校はウチに来いよ」と声を掛けられたのを覚えていたというが、理由はそれだけではない。鈴木はこう語ったことがある。
「僕は一番強いチームに入るんじゃなくて、一番強いチームを倒すのが面白いと思うんです」
ドラフトでも低迷していた広島に指名され、高卒から這い上がって4番に定着。強敵・巨人を倒し、16年からのリーグV3に貢献した。
「昔は巨人ファンだったのもあるけど、やっぱり巨人を倒さないとセ・リーグで優勝はできない。特別な思いがあります」
鈴木の性格からすれば、「王道」ヤンキースを選ばなかったのもうなずける。カブスで5年間キャリアを積んで「強い相手」を倒した後に、晴れてヤンキース入り──。これが最終的な野望ではないか。
■スパルタの父
鈴木は以前、苦笑交じりにこう言っていた。
「小学生の時に宿題をやるじゃないですか。オヤジに見つかると、『勉強なんかやっている暇があったら走ってこい! 体を鍛えろ!』って本気で怒られる。しかもウチのオヤジは手が出てくるから怖いんです。そんな親います? ホント、むちゃくちゃですよ」
宗人さんの発案で、町工場に80センチほどの鉄の特製バットというか棒を作ってもらい、ゴルフボールを打ち返す練習を取り入れた。
生まれ育ったのは、東京の下町、荒川区町屋。漫画「巨人の星」の舞台になった街で、星一徹&飛雄馬の親子さながら。「平成の星親子」とテレビ番組で紹介されたほどだ。
現在のバットコントロールは宗人さんによって培われたのは間違いない。
妻・畠山愛理との出会いは「台風」がきっかけ
■おしゃれな“兄貴”
高卒新人の頃、寮で兄弟のように仲が良かった先輩・菊池涼介(32)の話。
「あんなに細かった誠也が今ではゴリゴリの体をしている(笑い)。あの頃は着る物にも無頓着で、いつも同じ白いスニーカーをはいていた。ホント汚いから、靴をあげたり洋服をあげました。寮の誠也の部屋をよく襲撃したっけ。リアクションが良くてかわいいんです。あの誠也が100億円のメジャーリーガーになるなんて夢のようです」
■律儀な性格
二松学舎大付の市原監督がこう明かす。
「本人からは『詳しいことが決まったら連絡します』と。ネットでポスティング容認の記事が出る2時間前に本人から『今、正式に決まりました』と電話があった。もし、ネット記事が出た後で僕に連絡をしようものなら、『おまえ、順番が違うじゃないか』と言われるのが嫌だったのかもしれない(笑い)」
■大谷翔平
「1年夏、ウチ(二松学舎大付)が東北遠征に行った時に練習試合をしました。そこで大谷翔平君が投げていたんですが、ウチの打者で唯一まともに打てたのは誠也だけ。左中間への二塁打です。その時、誠也に『これがプロに行く投手だ。おまえもプロに行きたいなら、このクラスの投手をライバルと思って戦わないといかんぞ』と言いました」(市原監督)
■好物と苦手
「そぼろがあればご飯を何杯でもいける。家だったら4、5杯。オフに家に帰ると母が作ってくれます」とテレビのインタビューに答えたことがある。地元の荒川区はもんじゃ焼き店が多く、「明太子もちチーズもんじゃ」が好き。焼き肉も大好物。白子は大の苦手。
■運命の台風
妻は新体操で五輪に出場したスポーツキャスターの畠山愛理(27)。昨年末、NHK総合の「鶴瓶の家族に乾杯」にゲスト出演し、司会の笑福亭鶴瓶から鈴木との出会いを聞かれると、「台風があったから会えた。仕事で私が地方に行ってたんですけど、台風で中止になって日帰りしないといけなくなった。(東京に)帰ったら、ちょうど主人が試合を終えた時で、私の事務所の社長が主人と一緒に食事をするということだった。もし台風がなかったら東京にいなかったので」とエピソードを明かした。