クラブW杯決勝では惜しくも敗れるも「人の心を動かす」試合ができた
石井正忠が指揮官となって一番緊張したのは、監督初さい配の試合前ミーティングだった。
鹿島はホームで戦う場合、スタジアムに行く前に選手寮にスタッフ、選手が集まってミーティングを行う。
この時に「凄く緊張しました」と言うのだ。
■お守りを握って必死に緊張と戦った
「実は、監督に就任してすぐにサブマネージャーが、鹿島神宮のお守りをくれたんですよ。ユースのコーチ時代の選手だった彼が『石井さん、これを持って頑張ってください』と。ミーティングの時、お守りをズボンの右のポケットに入れ、ずっと右手で握り締めながらミーティングをやりました。ポケットに手を突っ込んで話している私を見ながら、恐らく選手たちは『石井さん、どうしちゃったの? 格好つけてんのかな?』と思ったんじゃないでしょうか。でも、全然そんなことはなかった。お守りをギュっと握り締めながら、必死に緊張と戦っていたのです。FC東京との試合だったんですが、サポーターの皆さんが、私を応援する横断幕を出してくれました。これは挨拶しなければ、と思って試合前にサポーターのところに行って一礼させてもらったのですが、もう泣きそうになりました」
■選手と監督の両方でJ王者となる
そのシーズンのカップ戦を制し、監督初年度にタイトルを獲得。翌16年はJリーグ前期優勝を果たした。Jリーグチャンプシップでは準決勝で川崎を倒し、決勝で浦和を破って年間チャンピオンとなった。
Jリーグ初の「選手と監督の両方でJ王者達成者」となったのである。
シーズンオフの12月8~18日、日本で開催された「FIFAクラブW杯(CWC)2016」に開催国枠として出場。
初戦でオーストラリアのオークランド・シティを2-1で下し、準々決勝で南アフリカのマメロディ・サンダウンズを、準決勝でコロンビアのアトレチコ・ナシオナルを破って決勝に進出した。
そしてスペインの名門レアル・マドリードと世界クラブ王者のタイトルをかけて激突することになった。
「リーグ戦とチャンピオンシップを戦い、もちろん選手たちも疲れていましたが、CWCでアジア勢初の決勝進出を果たし、レアルを相手に2-2から延長にもつれる試合をお見せできた。クリスティアーノ・ロナウドのハットトリックで2-4で敗れましたが、サッカーファンだけでなく、あの大会を見てくれた人すべての心を動かすことが出来たのでは、と思いました。とても意義深い大会でした」