ヤクルト村上「メジャー挑戦 早いほどいい」と断言できる精神構造とは…専門家が読み解く
「さっさと行かせてくれ」という意図はない
一方で、スポーツ心理学者でメンタルトレーナーの児玉光雄氏は、「村上選手の多くの言葉を分析していますが、私は今回の発言に驚いてはいません」と、こう語る。
「自分の思いを素直に伝えるタイプでありながら、彼は周囲に気配りができるアスリートだと受け止めています。ですから、自分勝手にさっさと行かせてくれ、という意図があるのではなく、球団と十分に協議して、球団が納得した上でしかメジャーへは行けないし、行かないはずです。村上選手に限らず、一流選手は常に、自分の力がどれだけ通用するのか考えている。かねてのメジャーに対する思いに加え、今季は三冠王を獲得。来季以降は本塁打王を連続で取り続けるとか、日本のプロ野球でやれることは限られてきます。若くて体力があって、万全な時にメジャー挑戦したいという気持ちに一層、傾いたとみています」
■同期の日本ハム清宮へのライバル心も
村上といえば、報道陣に「もっとプレッシャーをかけてください」と発言するなど、勝ち気な性格でもある。前出の児玉氏が言う。
「原点には同期である日本ハムの清宮幸太郎選手の存在があるのではないか。同じドラ1でありながら、清宮選手は7球団が競合し、村上選手は外れ1位。本人は公には発言していませんが、プロ入り直後は『清宮を追い越したい、同世代でトップになりたい』という気持ちがモチベーションになっていたと思います。そして今は、『自分がチームの4番であり、チームの中心にいたい』と闘志をむき出しにすることで成績を残してきた。『取れるタイトルは全部取りたい』などと、ときに大風呂敷を広げ、常に大きな目標を立てている。これはスポーツ選手の潜在能力を開花させるうえで必須条件。こうした性格がメジャー挑戦への伏線になっている気がします」
素直で勝ち気な一方、以前は自身が尊敬してやまない先輩の青木から、野球に対する姿勢などを厳しく指摘され、泣くこともあったという。
「これも素直に感情を表に出すという意味で村上選手の良いところだと思います。先日の侍ジャパンの強化試合でも、試合前の声出しで、誕生日を迎えた阪神の近本選手を引き合いに、『全打席ヒットを打ってくれると思います』と発言するなど、ムードメーカー的な役割も担っている。ベンチでは常に仲間を鼓舞し続けていますし、チームが優勝するために頑張っている姿は周囲に伝わっている。その上、結果も残しているので、チーム内での信頼度、好感度は高いはず。それでいて、今季の最終打席で56号本塁打を放つなど、言葉では説明しづらい不思議な力も持っている。来季はバレンティン(元ヤクルト)が持つ60本塁打の最多記録更新に期待しています」とは、児玉氏だ。