「朝青龍にあれをやめさせたらおかしくなる」熱海富士にも通じるルーティンの功罪
右足で仕切り線をはいた後、体を揺すりながら左右の足で8回、9回と足場をならす。秋場所を沸かせた熱海富士の立ち合いの「ルーティン」だ。
そんな言葉がない時代から、多くの力士やスポーツ選手には集中力を高めるためのしぐさや所作があり、形態模写のネタにもなる。
■闘志をみなぎらせた、あれ
高見盛(現東関親方)が気合十分に顔や胸をたたく「ロボコップ」アクションは、記憶に新しい。
朝青龍は制限時間いっぱいの塩で、左手を振り上げ、まわしをパーンとたたいて闘志をみなぎらせた。相撲っぷりにもマッチしていたが、悠然たるべき横綱にふさわしくないと嫌う人もいたものの、当時の北の湖理事長(顔写真)は擁護した。
「朝青龍にあれをやめさせたら、相撲がおかしくなってしまうよ」
横綱に甘い理事長だったが、何かにつけ批判される朝青龍が気の毒でもあったので、ここはもっともだと思って聞いた。
長い間に身についた流れは、簡単に変えられない。それに塩に立った時なら、相手のリズムを大きく乱すところまではいかない。