デーブ・スペクター氏が大谷翔平を語る「デコピンには弁護士がついていないからイジり放題」
僕は昔から野球が大好きなんだ。シカゴで通っていた中学校はカブスの本拠地のすぐ近くにあって、4階からは球場が丸見えだった。当時はデーゲームしかなくて、七回以降は子供が無料で入れたから、よく観戦に行っていたのが懐かしいね。
日本に来てからも、サンデージャポンのメンバーでつくった草野球チームに入っていた時期もある。ポジションはライト。打球があまり飛んでこないから試合中でも電話に出られるし、僕がミスしてもセンターのせいにできる。ちなみに、爆笑問題の田中裕二さんはピッチャーで4番を打つほどうまかった。しかも、これがズルくてね。本人もネタにしているけど、2000年に病気で片方の睾丸を取ったでしょ? そのせいで、田中さんがマウンドに上がると、審判が遠慮して「ツーボール」って言わないんだよ(笑)。
ずっと野球好きだった僕が大谷さんに注目し始めたのは、メジャーに行ってから。もともとすごい選手なのは知っていたけど、古巣の日本ハムは北海道だったから縁がなかったんだ。
最初はメジャーで二刀流なんて無理だろうって疑いの目で見られていたけど、フタを開けてみたら打者でも投手でも超一流。野手に専念した昨季は2年連続で本塁打王なんて漫画の世界だよ。
二刀流って弁当の数もタニマチの数も半分で済むし、球団にとってもコスパがいいよね。これから大谷さんの影響で二刀流にチャレンジする選手がどんどん増えたら野球はもっと面白くなる。考えただけでもワクワクするよ。
パワーが何より正義の米国で大谷さんがあれだけの成績を叩き出しているけど、現地のファンから「アジア人のくせに」とか嫌な目で見られることはないよ。身長193センチであれだけ筋骨隆々だから、もう完全に「メジャーリーガー」として受け入れられている。そもそもメジャーの4人に1人は外国人だから、特別視されることもない。
ただ、「日本人」というルーツは別の意味で評価されている。意外かもしれないけど、最近は米国人も「甲子園」(ジャパニーズ・ハイスクール・ベースボール)に興味を持ち始めているんだ。
米国だと、メジャーに行く選手は「親がプロだったから」「なんとなく野球がうまかったから」ってパターンが多い。そこまで野球が好きじゃない選手も珍しくないし、オフには派手にガッツリ遊んでたりするでしょ。
でも日本は違う。プロの前に「甲子園」という目標があるから、幼少期からみんな必死で練習する。ひとつひとつの動作を何度も反復して、精神を鍛えることも目的にしているのだから、もはや武道の修行、稽古だよ。畳の上で素振りしたり、独特な練習方法があるのもそういう背景があるから。米国人から見たらビックリする文化で、甲子園を目指す高校球児のドキュメンタリー映画まで作られたんだ。
大谷さんは、そんな日本の野球文化の中で育ったからこそ、あれだけ偉大な選手になったのかもしれない。ストイックで研究熱心。しかも、野球以外にあまり興味がなさそう。米国ではプロアスリートがあそこまで競技に専念するのは珍しいから、大谷さんはある意味「日本の野球文化の象徴」なんだよね。