「警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官」梶永正史著
■第12回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作
第12回「このミステリーがすごい!」大賞受賞2作品のうちの一作である。主人公はおなじみの警視庁捜査1課ではなく、企業犯罪や政治家の汚職を捜査する2課の刑事。しかも女性だ。普段は捜査対象を数字で追いつめていく〈電卓女〉こと郷間彩香は、ある日、渋谷の百貨店A館内の銀行で起きた立てこもり事件の犯人に指名され、現場に呼び出される――。
■「男目線じゃなくOLに近いような女性刑事を主人公にしました」
主人公を捜査2課、しかも女性刑事にしたのはなぜなのか?
「主人公を普通の警察小説とまったく違うところから持ってこようという考えはありました。ベテランが活躍するよりは、読者と同じレベルで、状況に巻き込まれてアタフタしたほうが面白いかなと。それも男目線ではなくて、OLに近いような女性にしました」
2課の刑事が銀行強盗の現場の指揮官となるのも異例だが、さらに不可解な展開がある。なんと上級官庁である警察庁の警視長・吉田と名乗る男が、SATの狙撃手を伴って現場にやってくるのだ。おまけに彩香と確執がある性格の悪い後藤警部、銀行の会長や秘書まで集まり現場は騒然とするも、なぜか緊張感がないのがおかしい。