「スコールの夜」芦崎笙著

公開日: 更新日:

雇用機会均等法後の女性活用の現実に鋭く切り込んだ企業小説

 吉沢環(たまき)は、メガバンクトップ、帝都銀行本店で初の女性管理職に抜擢された。東大法学部を卒業し、女性総合職1期生として入行してから20年。私生活を半ば犠牲にして手に入れたポストは総合企画部・関連事業室長。そこで環が任されたのは、赤字経営が続く子会社の解体という汚れ仕事だった。

 頭取の理不尽な鶴の一声で決まった方針だが、矢面に立たされたのは環。保守的な男社会の中で、嫉妬や偏見に押しつぶされそうになりながら、環は戦う。

 第5回日経小説大賞を受賞した話題作。爆発しそうな感情を抑え込んで組織人であろうとする女性管理職の内面がリアルに描かれる。だが、著者は男性で、現在、財務省大臣官房参事官を務める現役キャリア官僚。男女雇用機会均等法後の女性活用の現実に、小説という形で鋭く切り込んでいる。

 主人公の環は、女性総合職のフロントランナーとして、懸命に道を切り開いてきた。後輩たちの憧れの存在でもある。しかし、環は悩む。これは自分の実力なのか。逆差別によって過大な人事評価を受けているのではないか、と。子会社解体という非情な仕事を乗り越えたとき、環の前にどんな道が開けるのだろうか。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    参院選で自民が目論む「石原伸晃外し」…東京選挙区の“目玉候補”に菊川怜、NPO女性代表の名前

  4. 4

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  5. 5

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  1. 6

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  2. 7

    我が専大松戸の新1年生は「面白い素材」がゴロゴロ、チームの停滞ムードに光明が差した

  3. 8

    逆風フジテレビゆえ小泉今日子「続・続・最後から二番目の恋」に集まる期待…厳しい船出か、3度目のブームか

  4. 9

    新沼謙治さんが語り尽くした「鳩」へのこだわり「夢は広々とした土地で飼って暮らすこと」

  5. 10

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」