「瓶の中」高峰秀子著
5歳から子役として活躍し、本書を著した40代後半ではすでに700~800本もの映画に出演。古道具屋や骨董(こっとう)屋に足を運ぶようになったのは、休みに買い物に出かけてもすぐに人だかりができてしまい、裏口から逃げださなくてはならなくなったが、こうした店だけはいつも森閑としてサインを強要されたり、人だかりの心配がなかったからだという。
モノにまつわるエッセーのほか、「瓶の中」とタイトルが付けられた半生記や中国紀行、そして自らが古美術店を開くことになった顛末(てんまつ)記など。一人の人間として地に足を着けたその凛(りん)とした生きざまと、確固とした美意識が、著者を知らない世代の心にも響くに違いない。
(河出書房新社 2400円)