「バードドッグ」木内一裕著
主人公は、ヤクザから足を洗って探偵になった矢能政男。縁あって養子としてやってきた小学3年生の娘・栞のためを思い、組からの復帰の誘いを断って堅気の世界で暮らしていた。
ところが、そんな矢能の元に、燦宮会会長の二木から人捜しの依頼が舞い込んだ。日本最大の暴力団である菱口組系の三次団体である佐村組組長が突然、姿を消したというのだ。暴力団内部の犯行なのか、はたまた何らかの抗争に巻き込まれたのか。策略が働いていることは確かなのだが、警察に依頼することも難しく、かといって普通の探偵では荷が重い調査だけに、元ヤクザの矢能に白羽の矢が立ったのだった。失踪に関わっているかもしれない容疑者は全員ヤクザ。果たして事件の真相は?
2004年に「藁の楯」で小説家デビューし、同作が昨年映画化された著者による最新探偵小説。だまし合い、探り合いの中で、ヤクザの手口を知り尽くしている矢能ならではの推理が冴える。
(講談社 1500円)