「もみ消しはスピーディーに」 石川智健著
監察官が起こした不祥事を契機に、警察官僚はアメリカの諜報企業リスクヘッジ社と契約を結んだ。表向きは、第三者機関として監察を含めた組織全体の監視をするのが任務だったが、実際期待されていたのは不祥事をすぐに察知し外部に漏れる前に処理するという秘密のミッション。リスクヘッジ・ジャパンに所属する近衛怜良は、さっそく淫行をネタに脅されている警察官を発見し自己都合の依願退職へと導く。監察を出し抜いて不正を握りつぶす手法は表には出せないミッションだったが、その動きを不審に思った雑誌記者・鮎川譲は、監察官の和久井勝也に共闘することを持ち掛けるのだが……。
個人の自宅や自家用車のレベル、収入、家族構成、旅行頻度、消費傾向などの変動からテロリストを割り出す手段を確立した諜報企業が、国家警察の不祥事の隠蔽を請け負うという道具立てが見事な新しいタイプの警察小説。リスクヘッジ社対監察官のバトルを一気に読ませる。
(講談社 1500円)