「サンリオSF文庫総解説」牧眞司、大森望編
現存しない文庫のガイドブックとは素晴らしい。サンリオSF文庫は1978年に創刊されて1987年に休刊。その間刊行されたのは197冊。本書表4の惹句から引けば、「SFといえばスペースファンタジーのことだった時代に、宇宙ともファンタジーともほぼ関係のない先鋭的なラインアップを組み、一部の海外SFマニア/海外文学愛好者の間にセンセーションを巻き起こした」伝説の文庫レーベルである。つまり30年近く前に休刊した叢書なのである。もちろん現在はすべて絶版。新刊書店に行っても売っていない。
入手するには古本屋を駆けまわらなければならない。そういう叢書のガイドブックにはたして意味はあるのか。そうおっしゃる人もいるかもしれないが、これが読み物として抜群に面白いのだ。
編集顧問だった山野浩一の回顧インタビューをはじめ、当時の解説者や関係者のエッセーなどがたくさん収められているので、その裏側の話がてんこ盛り。出版に興味のある読者ならたっぷりと楽しめるだろう。私は熱烈なSF愛好者ではないのだが、それでも本書を楽しく読んだのはそういう理由による。