「自覚 隠蔽捜査5.5」今野敏著
今年の1~3月連続TVドラマ化された人気シリーズの最新第7作。5.5とあるように、シリーズ本編ではなくスピンオフの短編集。本編の主人公・竜崎伸也は元警察庁長官官房総務課課長。キャリアの出世コースを歩んでいたが、家庭内の不祥事のため東京・大森署の署長に降格。情や権威・慣習に左右されることなく原理原則に忠実な彼を、周囲は「変人」と揶揄する。本作では、竜崎を取り巻く7人それぞれの視点からこの特異なキャリア官僚の姿を描く。
大森署副署長の貝沼は、新聞記者への情報漏洩問題で苦慮するが、合理性の塊のような竜崎の判断に感心させられる(「漏洩」)。かつて竜崎を恋の病に陥らせた女性キャリア・畠山美奈子はハイジャック対応のスカイマーシャルの訓練を命じられる。男に交じっての訓練に自信を失うが、竜崎の的確な助言により危機を脱する(「訓練」)。
その他、野間崎管理官、大森署の関本刑事課長、久米地域課長、小松強行犯係長、そして竜崎の幼馴染みで同期の伊丹警視庁刑事部長など、シリーズお馴染みの面々が登場。
(新潮社 1500円)