作家生活25年の集大成となる記念作品を上梓 篠田節子氏に聞く

公開日: 更新日:

 しかし、インドの政治や文化について詳細な取材を進めるうちに、ファンタジックな物語など、とうてい書けないという思いに行き当たったという。

「貧困や根深い男尊女卑、身分の違いによる人権侵害や宗教の対立など、インドという国には発展の陰にあらゆる問題が内包されていることを突きつけられました。こんな過酷な現実を知ってしまった以上、作家として“おとぎ話”を書くことはできないと思いました」

 以降、現地取材はもとより、元総領事などインド関係者によって開催される勉強会などにも数年にわたって通い、インドという国の多面性を描き出す物語が完成した。

「インドに滞在経験のあるビジネスマンにもたくさん取材しました。皆さん口をそろえて“いや~、大変な目に遭った!”と言うんです(笑い)。主人公の藤岡とともに、インド社会で外国人が商売をして利益を得ることがいかに困難かを疑似体験してもらえれば、あの国の混沌がより鮮明に見えてくるはずです」

 ロサの助けなどもあり、何とか水晶の取引にこぎつける藤岡だったが、やがて地元政治家や共産主義過激派などの思惑に妨害され、命の危険にもさらされる。さらに、水晶の採掘現場では、村人が次々と病に倒れるという謎の異変も起こる。資本と搾取という対立構造から生み出される恐ろしい現実もリアルに描かれていく。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    八角理事長が明かした3大関のそれぞれの課題とは? 豊昇龍3敗目で今場所の綱とりほぼ絶望的

  2. 2

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係

  3. 3

    元DeNAバウアーやらかし炎上した不謹慎投稿の中身…たびたびの“舌禍”で日米ともにソッポ?

  4. 4

    松本人志は「女性トラブル」で中居正広の相談に乗るも…電撃引退にショック隠しきれず復帰に悪影響

  5. 5

    ついに不動産バブル終焉か…「住宅ローン」金利上昇で中古マンションの価格下落が始まる

  1. 6

    フジテレビ顧問弁護士・菊間千乃氏に何が?「羽鳥慎一モーニングショー」急きょ出演取りやめの波紋

  2. 7

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  3. 8

    菊間千乃は元女子アナ勝ち組No.1! フジテレビ退社→弁護士→4社で社外取締役の波瀾万丈

  4. 9

    中居正広「引退」で再注目…フジテレビ発アイドルグループ元メンバーが告発した大物芸能人から《性被害》の投稿の真偽

  5. 10

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も