作家生活25年の集大成となる記念作品を上梓 篠田節子氏に聞く
この物語でとくに魅力的なのが、ロサという少女だ。貧しい家に生まれ、幼い頃から“生き神”となることを余儀なくされた彼女は、成長と共にその役割を奪われ、差別と偏見に満ちた世界で生きている。しかし、悲劇の中に沈んでいるだけの、はかないヒロインではない。
「藤岡は過酷な運命を背負ったロサを救い出そうとしますが、やがて成長した彼女の存在が、藤岡の運命も変えていきます。ひたすら美しく可憐なヒロインは男性の作家さんに任せるとして(笑い)、私は女性が持つ生きる強さのようなものを描きたかったんです」
インドの光と闇の中で、藤岡とロサの行く末がどうなるのか。ぜひあなたの目で見届けて欲しい。(KADOKAWA 1900円+税)
▽しのだ・せつこ 1955年東京都生まれ。東京学芸大卒業。90年に「絹の変容」で小説すばる新人賞を受賞し作家デビュー。97年「ゴサインタン」で第10回山本周五郎賞、「女たちのジハード」で第117回直木賞受賞。「ブラックボックス」「長女たち」など著書多数。