「タブロイド」は「小さくてスゴイ」
「コンサル100年史」並木裕太著
「持ち重りがする」という表現がある。本書の場合はその反対だ。見た目の予想を裏切るように、拍子抜けするぐらい軽い。秘密は本文用紙にある。ザックリとした肌触りの嵩高中質紙「アドニスラフW」と、新聞紙そっくりの風合いと、しっかりした厚みを兼ね備えた「タブロ」の2種類を使用。偶然なのか、ともに新聞用紙の製造ラインを持つ王子製紙苫小牧工場での抄造だ。
空気がたくさん漉き込まれていることと、原料パルプの風合いを残したテクスチャーとの相乗効果で「厚いけれど軽くしなやか」な紙を実現している(ちなみに、本の厚さのことを「束」、本を厚くすることを「束を出す」という)。さて、読者がいま手にされている「日刊ゲンダイ」は「タブロイド新聞」と呼ばれる。そして普通の新聞より小ぶりなこのサイズを「タブロイド判」と呼ぶ。今回注目する紙「タブロ」はこれにちなんでの命名とのこと。
では、タブロイドの語源は? と気になり調べると、意外にも発端は19世紀末、イギリスの製薬会社までさかのぼる。従来の「粉薬」を固め「タブレット(錠剤)」を開発、「タブロイド」なる商品名で売り出したところこれが大当たり。転じて「小さくてスゴイ」ものは飛行機であれ新聞であれ「タブロイド」なモノとなった。低身長だがグラマラスな女性を「トランジスタ・グラマー」というがごとし。「タブロイド」とは世相を映した流行語だったのだ。話がそれた。そもそも、「束が出る」用紙を選ぶことでふわりと軽い仕上がりを目指したデザインの意図は一体どこにあるのか?