「あなたが消えた夜に」中村文則著

公開日: 更新日:

「死体が出た。……2人目だ」。係長からの電話で、悪夢から覚めた市高署の刑事・中島は現場に向かった。目撃証言によれば犯人は1人目と同じくグレーのコートを着た男。凶器は包丁。連続通り魔事件発生とあって、小さな町に警視庁捜査1課が乗り込み、特別捜査本部が設置された。

 所轄の中島は、警視庁の美人刑事・小橋とコンビを組んで捜査にあたることになった。“コートの男”をめぐってマスコミの報道は過熱の一途。だが、事件は序の口に過ぎず、死体はなおも増え続けた。

 相次ぐ殺人の犯人は“コートの男”なのか。模倣犯の仕業なのか。あるいは、模倣犯を装って自分の目的を遂げようとする殺人者が存在するのか。

 事件は錯綜する。中島と小橋が足を棒にして探し当てた事件関係者や重要参考人は、みな心に闇を抱えている。刑事である中島自身、少年時代のつらい記憶にさいなまれ続けている。

 警察ミステリーは徐々に心理ドラマの様相を呈し、登場人物の心の奥深くに分け入っていく。人はなぜ人を殺すのか。そんな人間をじっと見つめていながら、神はなぜ手をこまねいているのか。人は人を救えるのか。重たい問いが残るが、かすかな光も見える。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  5. 5

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  1. 6

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 7

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 8

    雑念だらけだった初の甲子園 星稜・松井秀喜の弾丸ライナー弾にPLナインは絶句した

  4. 9

    「キリンビール晴れ風」1ケースを10人にプレゼント

  5. 10

    オリックス 勝てば勝つほど中嶋聡前監督の株上昇…主力が次々離脱しても首位独走