「武道館」朝井リョウ著
幼い頃から歌と踊りが大好きだった愛子は、念願かなって新アイドルグループNEXT YOUのオーディションに合格。高校1年生になった春、武道館のある北の丸公園でデビュー記念イベントを行った。そのとき、センターの杏佳が、いつか武道館でライブをやることを宣言、以来それがメンバー共通の目標となった。
それから1年、杏佳が突然卒業を表明。5人となったメンバーは、一風変わった握手会、売り上げランキングに入るためのCD販売戦略など、独自のスタイルで人気と知名度を上げ、一歩ずつ夢へ近づいていく。しかし、少し太ると途端に「デブ化により完全終了」とネットに書かれたり、握手券付きのCD販売は「コンセプトキャバクラ」と揶揄される。夢はかなえたいが、ごく普通の恋愛ができなかったり「アイドルはこうあらねばならない」というプレッシャーに、愛子たちメンバーは徐々に違和感を覚え始める……。
「桐島、部活やめるってよ」で現代高校生の心情を鮮烈に描いた著者が、現代アイドルの内面に深く入り込み、悲痛な心の声をすくい取っていく。(文藝春秋 1300円+税)