「宵待草 夜情」連城三紀彦著
国文学者の「私」は、銀座の工事現場から明治初期の人骨の一部が発見されたニュースを聞き、明治22年に殺された能楽師・藤生貢のものではないかと思う。藤生流は正史には登場せず、貢の父・伸雅を援助していた伯爵の回顧録に、欧州で暮らしていた伯爵の5年ぶりの帰国の祝いの席で亡き父の遺志を継いだ貢が「井筒」を舞ったことが記されているだけだ。
貢はその宴の3日後に失踪し、10日後に変死体となって発見された。当時の新聞によると、伸雅の後妻・篠が、当時16歳だった貢を殺害し、その遺体を切り刻んで自宅近辺の桜の木の根元に埋めたとある。(「能師の妻」)
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