「話虫干」小路幸也著
故郷の馬場横町市立図書館に司書として就職した糸井は、館長から副館長の榛(はしばみ)と「話虫干」をするよう指示される。榛から見せられた図書館の蔵書である夏目漱石の「こころ」を開くと、途中からまったく異なった物語が展開していた。それが「話虫」の仕業らしい。「話虫干」とは、物語の中に勝手に入り込んで、その内容を勝手に変えてしまう話虫を虫干しすることだという。「こころ」の物語に入り込んだ糸井は、後に「K」と呼ばれる桑島や圖中(となか)の学友に、榛は後に「先生」の妻となる静さんのお花の先生となり、登場人物たちの人生に寄り添いながら、話虫の行方を捜す。
名作へのオマージュから生まれた長編小説。(筑摩書房 740円+税)