「革命戦士」と呼ばれた男の実像に迫る

公開日: 更新日:

 著者はこんな覚悟を持って長州について書き、さらには長州に対する不快感をあらわにするキラー・カーンらにも取材を敢行している。妙なホラ話などは出てこず、プロレスビジネスのどんぶり勘定的なところや、何がきっかけでスターダムにのし上がるかといったところまで記述されており、当時のマット界をめぐる騒動がかなり整理されている。

 最近の長州といえば、「滑舌が悪い」「なんだかバラエティーによく出てる気の良いおじさん」といった扱いではあるが、昭和世代からすると隔世の感があるのではないか。ゴールデンタイムにプロレスが民放で中継されていた時代、長州はアントニオ猪木に噛みつき、華のある藤波辰巳(現・辰爾)と名勝負を繰り広げ、「革命戦士」と呼ばれていた。

 政治家が安易に「維新」を使う昨今、1980年代に「維新」を名乗った若き日の長州がどんな意図・衝動をもって周囲にケンカを売りまくったのか、そしてプロレス団体WJの大コケとそれ以降の穏やかな日々……。

 ここに書いてあることが何のことだかチンプンカンプンの人は、恐らく本書を読んでも何が面白いか分からないだろう。意味が分かった方は、「噛ませ犬発言」「前田セメント事件」「コラコラ問答」「タイガーマスク誕生秘話」「長州・ミュンヘン五輪出場」などの裏事情を楽しんでいただきたい。(集英社インターナショナル 1900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出