「映画俳優安藤昇」山口猛著
男が惚れる男のスター。といっても健さんや文太兄いではない。何しろ特攻隊くずれの愚連隊上がりという本物。誰からも「目つきが違う」と恐れられたのがこの人だ。
生い立ちに始まって下北沢、渋谷と縄張りを広げた愚連隊時代。入れ墨や指詰めなど、旧弊なしきたりを嫌い、あくまでスーツの似合うギャングとして肩で風切った時代の話が面白い。映画界入りしてからは松竹から東映に“掟破り”で移籍。数々の美女と浮名を流しながらも飄々とした姿が何ともクール。おまけに藤純子の「緋牡丹博徒」や山田洋次の「寅さん」シリーズまで、元はなんと安藤昇の発案だったという。写真も豊富で資料性も十分。(ワイズ出版 1200円+税)