【特別編】首相の背後霊の悪を見極める必要
甘粕によれば、東条は高峰三枝子の歌う「湖畔の宿」が好きで、首相官邸に高峰を呼んで歌わせたりしていたという。戦意を高揚させないとして禁止にした「湖畔の宿」を自分だけは楽しんでいたわけである。軍人の身勝手さの標本だろう。その東条がトップだったこともある関東軍は、ソ連(現ロシア)が攻めて来るや、真っ先に逃げ出した。満州映画の理事長として自殺した甘粕は、社員に旅費と生活費を配った後、次のような別れの挨拶をしている。
「関東軍は新京(満州国の首都)を棄てて、もぬけの殻になってしまいました。まったく腰抜けの軍人どもです。新京にいた彼らの家族は(八月)九日の夜の闇に紛れて引き揚げてしまったそうです。しかも、一等、二等の寝台車で引き揚げていったとは、けしからん話です」
鳩山一郎は岸を指して「総理大臣が金儲けしちゃいかんよ」と言ったそうだが、インドネシア賠償汚職等でも岸の名はさんざんに取り沙汰された。ちなみに、この時、当時のインドネシア大統領のスカルノにささげられたのが、現在のデヴィ夫人である。孫の晋三の糾弾のためにも、祖父の岸の積み重なった悪を私は徹底的に追及したいと思っている。★★★(選者・佐高信)