【特別編】これが一行でヒットを生む法則
「1行バカ売れ」川上徹也著 角川新書
キャッチコピーはとてつもなく大切だ。私がそう認識したのは、いまから12年前、自著の「年収300万円時代を生き抜く経済学」が、文庫版も含めると40万部以上の大ヒットとなったときだった。
それまでの私の著作は、数万部売れたら御の字だった。だから大ヒットは、百パーセント、タイトルのおかげだと思っている。実はこの本は、直前まで「新たな二重構造を生き抜く経済学」というタイトルだった。印刷に入る直前、編集者から「いいタイトルを思いついた」という電話がかかってきて、急きょ、変更したのだ。そのとき、私も少し売れるかなという予感がした。その後、「年収300万」は流行語大賞のトップテンに選ばれた。
本書は、たった1行で大ヒットを生み出したキャッチコピーの法則を明らかにしている。ただし、本書が優れている点は、短いフレーズで、心をわしづかみしてしまう珠玉のキャッチコピーが、ふんだんに事例として掲載されていることだ。
読者の興味をそいでしまうので、少しだけ本書が取り上げているキャッチコピーを紹介すると、「芸能人は歯が命」「鳥取は、スタバはないけど、スナバがある」「千年に一人の逸材」などだ。こうしたキャッチコピーが、どのように生まれ、どのように人々の行動に影響を与えたのかを、本書は軽快な筆致でつづっている。