「鮫言」大沢在昌著
20代のころ、著者は〈陽のあたるオヤジ〉になりたかった。21のとき、2つ3つ年上のバニーガールに惚れたが、彼女には不倫関係の30を過ぎた男がいた。あるとき、彼女が著者のことをその男に話すと、その男は「好きなんだね、その若い人が。その人の話をしているときの君の目は輝いている」と言った。それを聞いて著者は喜んだが、彼女が選んだのはそのオヤジだった。そのセリフはオヤジならではの必殺テクニックだと気づいたのは、著者が30になってからだった。
〈陽のあたるオヤジ〉というのはそういう存在なのだ。「週刊プレイボーイ」に連載された20年分のエッセー集。
(集英社 1600円+税)