「ライアー」大沢在昌著

公開日: 更新日:

■だまし合いの末に知った真実の愛

 主人公は、大学教授の優しい夫と私立小学校に通う可愛い息子を持ち、マーケットリサーチ会社で働く女・神村奈々。幸せそうな表向きの顔とは別に、奈々には誰にも知られてはならない大きな秘密があった。

 それは、彼女の勤める会社は政府がつくった暗殺組織であり、彼女自身が殺人の才能を持った優秀な工作員であること。仕事は、出張を装った海外で行われ、計画に従って処理作業を済ませた後は、何食わぬ顔をして帰国するのが常だった。ところが、ある日夫が娼婦と思われる女性と一緒に火災に巻き込まれて亡くなったことで、生活が一変。夫は事故で死んだのではなく、何らかの事情で殺されたのではないかという疑いを持った彼女は、長年の経験から生じた予感に突き動かされるようにして、夫の死の謎を解こうとする。果たしてその死の真相とは……。

 クールビューティーな女主人公の嘘と愛を描いたアクション・ハードボイルド。殺人に一切の感情を持ち込まない主人公の冷酷なまでの冷静さと、大きな嘘で平穏な家庭を守ろうとする愛の深さの対比が印象的。嘘の先にたどり着いた真相が切ない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭