「三河の風」外山滋比古著
徳川発祥の地である三河は、明治維新以来、賊軍となって厳しい風にさらされたが、三河の人間はじっと耐えた。寒風に吹かれていると体が意識しなくなる。被害を受けても感じないのは、〈慈悲の無知〉である。だが、維新によって敗者となり苦しんだ人間や地方があることは知ってほしい。三河の人間は意気地なしだからそういうことから目をそらして生きてきたが、力で押しつぶすことができない根性がいつか必ず頭を持ち上げることを、三河の人間は黙って示している。(「吹きざらし」)
三河出身の著者が、年を取ってふるさとへの鎮魂の思いをつづった一冊。
(展望社 1500円+税)