「孤高 国語学者 大野晋の生涯」川村二郎著
日本語の研究を通して、「日本人とは何か」と問い続けた国語学者、大野晋の生涯を描く評伝。
大正8年、東京・深川の砂糖問屋に生まれた大野は、書画骨董に夢中だった父親が掛け軸を「カケジ」と呼ぶその言い方が、長じても耳に残っていたというほど、幼いころから言葉に鋭敏な感覚を持っていた。一高進学後、「日本とは何か」という問いの答えを「万葉集」に求める中、江戸時代の学者・契沖の書物に衝撃を受け、学問の素晴らしさに開眼。辞典の編纂や名著「日本語練習帳」の執筆に飽き足らず、還暦を過ぎてから「日本語の起源はタミル語である」との研究成果を発表し、論争を巻き起こす。その終わりなき学者魂を描きながら、日本語の奥深さをも伝える。(集英社 740円+税)