「ふる」西加奈子著
28歳の花しすは、小さいころから自分の体にまとわりつく白いふわふわとした存在に気づいていた。同居人のさなえや飼い猫など周囲の生き物全てに、そのふわふわはまとわりついているが、みなには見えないようだ。ウェブデザイナーのアシスタントと称しているが、外国物のアダルトビデオの出演者の女性器にモザイクをかけるのが花しすの仕事だ。
職場の先輩の朝比奈やバイトの黒川との会話、行きつけのパン屋の店員やタクシーの運転手とのやりとりを、密かにICレコーダーに録音している花しすは、眠る前にそれに耳を傾ける。
花しすの2011年12月19日からの3日間と、これまでの人生が交錯しながら進行する長編小説。(河出書房新社 530円+税)