「ヤコブソン・セレクション」ロマン・ヤコブソン著、桑野隆ほか編訳
20世紀を代表するロシア出身の言語学者の膨大な著作の中から選りすぐりを編んだ論考集。
「詩人たちを浪費した世代」では、亡くなった畏友で詩人のマヤコフスキイを追悼。故人の実験的な未来派詩人としての顔と、社会風刺の詩人の顔は「中世演劇におけるような喜劇的な面と悲劇的な面」と同じで、なんの矛盾も転向もないと記す。その他、多くの学問分野で応用される「選択」と「結合」などの二項図式を駆使して、言語一般の特徴と失語症との関係を論じた「言語の二つの面と失語症の二つのタイプ」や、幼児の言語音獲得の初期段階にアプローチする「なぜ『ママ』と『パパ』なのか」など11の論文で多岐に及ぶその仕事を概観する。(平凡社 1600円+税)