「波羅蜜」藤沢周著
葬儀ディレクターの倉木に、ある日、商事会社に勤務する梅谷と名乗る男が接触してきた。梅谷は、倉木に「私の葬式をあげて欲しい」という。梅谷は、倉木が担当の病院から遺体を回してもらうため、看護師の杏子に金を渡し、セックスの相手も務めていることを知っていた。
男の真意が分からないまま、後日、名刺の番号に電話をかけると、梅谷という男は3カ月前に死んだと教えられる。再び現れた男を問い詰めると、別の人物の名刺を次々と出してくる。梅谷を含め、一流企業に勤める彼らは、いずれも自死したという。自殺をゲームとして楽しむ集まりがあることをにおわせる男は、倉木に自殺ビジネスを持ち掛けてくる。
生と死のはざまにある「闇」を描く長編小説。(光文社 880円+税)