「蟲息山房から」車谷長吉著

公開日: 更新日:

 おおつごもりの晩に、夢を見た。会社で私と背中合わせに座っている女が黒い靴下を私の机の上に脱ぎ捨てて、49階の窓から飛び降りたのだ。私は周囲の者からいわれのない追及をされた。飛び降りた女は「湿り顔の鼻ペちゃ」だった。正月2日に相模湖に行ったら茶店から狐が出てきておでんと酒を出してくれた。鏡の中の白骨の男が歌う「雨降りお月さん」を聴いていると、酌をしてくれた狐が「こんな顔でしょうか」と言うので見ると、「湿り顔の鼻ぺちゃ」が透けて見えた。産毛が総毛立った。(「死の木」)

 昨年5月に鬼籍に入った著者の小説、エッセー、俳句、対談、日記などを収載した遺稿集。

(新書館 2000円+税)






【連載】今日の新刊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情