「トウガラシの世界史」山本紀夫著
もちろん、文献的な研究も怠りなく、旺盛な好奇心に突き動かされるかのように、この“香辛料のキング”トウガラシの発見から、日本を含む世界各地への伝播、また栽培化や品種改良の歴史などが、興味深い図版を示しながら語られる。
日本にトウガラシが伝来したのは16世紀後半から末というが、日本人はあの赤い実の姿に親しみを感じたようで、江戸時代の俳句に「赤蜻蛉 羽をもぎれば 蕃椒」があるという。おや、あのフォークの「あのねのね」の歌は、これをパクリましたか!
個人的にはひとつの謎が解けた。時々寄る神楽坂のイタリアン「A」のメニューに「ンドゥイヤ」なる奇妙なシロモノがある。正体もわからずにやたらとピリピリ辛いので面白がって食べていたのだが、これが南イタリアの代表的なトウガラシ入り腸詰めだったのである!(中央公論新社 860円+税)