「花が咲くとき」乾ルカ著

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 札幌に住む主人公・瀬川大介は、クラスメートからのいじめや成績にうるさい両親のもとで鬱屈している小学6年生。友人もなく、隣家の指が2本ない質屋の老人・佐藤北海の行動を観察するのが唯一の趣味だった。

 北海が大事にしている庭木の花が咲かないよう庭に忍び込んで芽を削っていたのだ。そんなある日、大介は楽しみにしていたキャンプの予定を禁止され、家出を決意した。そして、出かける北海の軽トラの荷台に潜み、家を出たのだが……。

 2006年「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞してデビューした後、「あの日にかえりたい」で第143回直木賞候補に、「メグル」で第13回大藪春彦賞候補になるなど、その実力に期待が集まる著者の最新作。日々に不満とやる方なさを感じている少年と、その隣家に住む謎めいた老人との北海道から長崎にわたる2人旅が、老人が抱えていた人生の闇を少しずつ解き明かし、少年を成長へと導いていく様子が丁寧に描かれている。(祥伝社 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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