イラストレーターの池田は、友人の作家・小野田に、自分が語る話を小説にしてほしいという。
仕事で地方に行ったとき、昭和の残照がある建物の2階にあったバーに入ってバーボンを飲んだ。
1年後、そのバーに行ったら、かつてのバーテンダーの息子がやっていた。
3度目に訪れたとき、その商店街があった一角は更地になっていた。
バーの移転先を訪ねてみたら、店主は女性になっている。
池田が以前と同じバーボンを注文すると、彼女の目に涙があふれた。
最初のバーテンダーは、彼が幼いころ別れた父親であり、女性店主は異母妹だったのだ。(表題作)
現実と虚構の世界が交錯する8つの短編。(文藝春秋 1800円+税)