怖い話で思い切りヒンヤリ ちょっと早い「怪談本特集」
「風怪(ふうかい)」風の怪談舎編著
いじめを苦にして飛び降り自殺をした少年がいた。それから1年ほどして、校舎を見上げると、亡くなった少年が落ちてくる姿を見かけるという幽霊話が出始めた。
それから二十数年が過ぎて、実家に帰る途中で母校の中学校に立ち寄ってみたSさんは、幽霊の出るという場所にひとりの老婆が立っているのを見る。老婆は、こちらのほうにゆっくりと顔を向けたかと思うと、すうっと消えてしまった。
居酒屋で待ち合わせた友人にその話をしたSさん。すると友人は、「その老女は自殺した少年の母親だと思う。何度通っても息子の幽霊を一度も見られなかった母親は、生前、自分が幽霊になった姿でも、もう一度息子の姿が見たい、と言っていたらしい」という。
人間だからこそ遭遇する怪奇体験や切なく怖い街の怪談話40話を収録。(三五館 1300円+税)