「PTAグランパ!」中澤日菜子氏
「私もPTAの役員をした経験がありますが、仕事なら利益のためにという大義名分が立ちます。でも、ボランティア的要素の強いPTAは落としどころがないので難しいんですよね。しかも今は家族形態も生き方も十人十様で、同じ父親母親といっても、ひとくくりにはできないほど。勤を通して見えるそれぞれのキャラクターや、世代間、男女間などの価値観の違いを意識して書きつつ、分かり合う努力をテーマに据えました」
勤にしてみれば、主婦の子連れ居酒屋での打ち上げに始まり、形だけの総会など理解不能なことばかり。しかし、イマドキの若者である金髪会長との付き合いや学校行事の騒動に巻き込まれるうちに、気持ちに変化が表れる。一方、反目していた女性陣も、融通は利かないが、悪いことは悪いとハッキリ言う勤の“真っすぐ”な側面に触れ、当初の険悪なムードは薄れていく。
「人って何歳になっても分かろうとする努力を惜しまなければ変われると思うんです。70歳近い勤が変われたのも、諦めないで歩み寄ったから。他人への共感や想像力が、彼の言葉を変え行動を変え、人生を豊かにしていったんです。もうひとつ、面倒くさい人と思われても、長年培ってきた正義感を捨てなかったことも大きいでしょうね。そこが頑固親父たるゆえんですが、その勇気が周りも変えたんです。今の60代半ばは、元気も時間も才能もある稀有な世代です。第二の人生はそのキャリアを地域と住民、世代間などを結ぶ役目として使って欲しいですね」