スマロス症候群まで巻き起こした「SMAP解散」とは何だったのか
「SMAPと平成」中川右介著
前代未聞の成り行きで流れ解散したSMAP。おかげで“スマロス”騒ぎまで起こっているらしい――。
SMAP論には2種類がある。ひとつは熱心なファンが楽曲や出演番組やCMまでをネタにあれこれと思いを語りつづるもの。もうひとつは、彼らの活動の歴史背景との関わりを通してアイドルと時代を語ろうとするもの。前者はSMAPと同世代の40代以下の著者に多く、後者はもっと年長の著者に多い。つまりアイドル文化に対する姿勢が世代で分かれるわけだ。本書は明らかに後者。
話題はSMAPの生みの親・ジャニー喜多川の人生から始まる。アメリカで生まれ、戦後は米軍の情報機関で働いたらしいジャニーの謎めいた人生。それまでのアイドルが貧乏な生い立ちを背負っていたのに対し、全員70年代生まれのSMAPは芸能界にありがちな貧乏物語とは無縁だった。それが昭和天皇の容体が悪化する直前にグループとなり、平成の始まりとともに一気にスターダムへ駆け上がっていったのだ。その陰で田原俊彦や男闘呼組や光GENJIらは無残にも凋落していく。
政界再編や地下鉄サリン事件など日本社会の激しい変化の中で輝き続けたSMAPとは何だったのか。著者はクラシックやポップスなど音楽雑誌のベテラン編集者だ。(朝日新聞出版 820円+税)